「ここ本当に原宿?」という風景も、川にフタしてできた道「暗渠」を歩いてみた【暗渠:渋谷川編②】

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渋谷川の暗渠を辿る後編です。

渋谷駅南側の八幡橋をスタートして、表参道にぶつかるキャットストリートまで歩いた前編に続き、後編では、表参道から千駄ヶ谷方面に向かう道を歩いてみましょう。

キャットストリートは表参道で終わり、その先は「旧渋谷川プロムナード」という名前に変わります。「渋谷川」という単語が残されていて、ちょっと嬉しく思いました。

原宿橋の親柱。橋の跡はちょくちょく見つかります。

ここにもあった親柱!

「原宿橋」と書かれた親柱がありました。前回も登場した親柱ですが、かつて橋がかかっていて、その両側に橋の名前が書いてある柱のことです。このあたりにあった橋の名残ですね。

一つ一つ紹介していませんでしたが、ここに来るまでにも「穏田橋」「参道橋」と書かれた親柱が残っています。気にしながら歩けば、橋の跡はけっこう見つかるもので、暗渠散歩の楽しみの一つです。

さらに北へと向かいます。神宮前二丁目付近には、本流の広い道に並行するように、細い道が何本かくねくねと通っています。たぶん、並行に流れていた傍流だったんでしょう。

ひっそりと、くねくねと、細い道が続きます。先が見通せないから、この先どうなるのかわくわくする感じ。私が好きなのは、まさにこういうタイプの道なんです。本流よりも、支流とか傍流に多い道は、知らない場所を探検してる感じがいいんですよね。

ここほんとに原宿?という風景

支流にはこういうタイプの道も多いです。年季の入った建物が並んでいたり、路上の園芸がはみ出していたり。再開発の手が伸びない、ある意味で昔のままの路地。こういう道を歩くと、なんだかほっとします。

霞ヶ丘団地跡

先に進むと、とつぜん広い道に出ました。ここは外苑西通りです。

交差点には「霞ヶ丘団地」とありますが、いまでは団地は見当たりません。2020年東京オリンピック・パラリンピック大会の開催に向けて取り壊しになってしまいました。渋谷川は、団地の脇に沿って千駄ヶ谷駅の方向に流れていました。

2020年東京オリンピック・パラリンピック大会の開催に向けて新国立競技場の工事が進んでいます。ついこの前まで基礎の工事をしていたんですが、もうこんなに立ち上がっているんですね!渋谷川は、国立競技場の敷地内を、暗渠となって外苑西通りに沿って進んでいます。

クレーンや工事車両がいくつも取り囲み、工事が今まさに進んでいます。ちょうど赤いクレーンのいるあたりに、手前の道と並行して渋谷川が流れていたはずです。

渋谷川はこの先、千駄ヶ谷駅の脇を通って新宿御苑の池にたどり着きます。さらにその先の天龍寺というお寺に水源があったようです。

渋谷駅も、千駄ヶ谷駅周辺も、工事によってどんどんその姿が変わっていきます。それで思い出したんですが、ここまで来る途中、キャットストリート沿いのお店にこう書かれていました。

ファッションにも、変わるものと変わらないものがある。

これはファッションについてのコピーですが、街もそうだよなと思ったんです。

渋谷川沿いの風景も、どんどん変わっていきます。渋谷川自身も、姿を変えました。でも、渋谷川の流れはたとえ暗渠になっていても、いまでも変わらずそこにある、ということもできます。

変わり続ける東京で、変わらず流れ続ける渋谷川。

暗渠散歩をすると、移り変わりゆく街並みや昔ながらの風景に出会うことがあります。変わらずそこにあるものに私はなんだかほっとするんですが、それは街の中にもずっと変わらないものがあるんだということに、ちょっと安心するからかもしれません。

三土たつお(みつちたつお)プログラマー・ライター・都市鑑賞者

1976年東京都北区しもふり銀座(谷田川暗渠)そばで生まれる。「@nifty:デイリーポータルZ」にて街歩きの記事などを多く書く。編著「街角図鑑」(実業之日本社)、共著『東京「暗渠」散歩』、「凹凸を楽しむ東京スリバチ地形散歩」(ともに洋泉社)等。東京を自転車で走るうちその地形に興味を持ち、川のない谷としての暗渠に目覚める。

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