Swimmy水泳教室の様子
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マンツーマン指導で発達障害児に水泳と教育の場を提供 Swimmy株式会社の取組

親子で体を動かすことは、心身の健康につながるだけでなく、家族の絆も深まります。しかし、障害のある子供たちが、体を動かす場はまだまだ制限があります。その現状を打開すべく、発達障害児に特化した水泳教室を開催しているのが、スイミングスクールのSwimmyです。同社の菅原優さんにお話を伺いました。

Swimmy株式会社
代表取締役 菅原 優
加盟団体情報

Swimmy株式会社

代表取締役 菅原 優

2019年1月28日

東京都港区浜松町2丁目2番15号 浜松町ダイヤビル2F

東京都内で水泳の個人レッスンを実施。マンツーマン指導を生かし、発達障害を持つお子様も安心してレッスンに参加できるような体制づくりを行っている。水泳の技術に加え、今後の人生にも役立つ「考える力」「主体的な行動力」が身につくようなSwimmy独自の水泳レッスンを実践している。

貴社では、スポーツの推進に関する取組としてどのようなことを実施されていますか。

当社は、主に少人数やマンツーマン指導をしているスイミングスクールです。ターゲットは、基本的に年中~小3くらいの子供。初めて水泳を習う子や、ほかのスクールに通っているけれど、なかなか上達しないので丁寧に指導して欲しい子などが来てくれています。
また、日本に住む外国人向けの指導も行っており、こちらは子供から大人まで通っています。日本のように、学校で当たり前のように水泳を習える国は少ないので、マンツーマン指導で水泳にチャレンジしてみたいというニーズがあるんです。一方、英語で水泳を教えられる指導者は不足しているので、社員に英語教育なども行っています。水泳は世界的にポピュラーな生涯スポーツなので、国籍や世代に関係なく多くの人にトライしてほしいと思っています。

スイミングスクールをつくった経緯や目指しているところを教えてください。

もともと水泳自体を教えたいというよりは、水泳を通して子供たちが人間的に成長してほしいという気持ちからSwimmyを創立しました。
自分自身もずっと水泳をやってきましたが、10年ほど前からアスリートのセカンドキャリア問題が世の中で取り上げられるようになってきました。オリンピックに出られるようなトップアスリートは、大勢いる競技者のほんの一握り。そこを本気で目指しても、トップになれない人がほとんどです。また、たとえトップアスリートであっても、引退後に一般社会に出て、自分らしく生きるのは難しいことです。なので、当スクールでは、水泳を通して、自分で物事を考えたり、主体的な行動ができる力を身につけたりすることができるようアプローチしています。このように教育的側面も大きいため、教育ニーズの高い子供もターゲットとなっているわけです。

バタ足の練習の様子

貴社では、発達障害児向けの水泳教室を開催されておりますが、この取組を始めるに至ったきっかけはどのようなことだったのでしょうか。

水泳指導をしていく中で、3年くらい前から、発達障害児をもつ親御さんからマンツーマン指導の申し込みが増えてきました。なぜだろうと思ってお聞きすると、「スイミングスクールの入会を断られた」「グループ行動が苦手で、集団レッスンが受けられない」「指導者が障害についてあまり理解がないので不安」などという声があがりました。もともと発達障害児への水泳指導ニーズはそこまであると思っていなかったのですが、このような社会的課題があると知った以上は、私たちで提供できることがあるならやろうと思い、場づくりを始めました。
発達障害児に水泳を教えるインストラクターには、当社独自の指導者研修を行なっています。発達障害児への指導でも、マンツーマン指導により「一人一人の個性に寄りそった指導」というものが培われていれば、障害の有無によって特別に指導方法を変える必要はないと思っています。健常児でも、急に暴れる子や言うことを聞かない子はいます。そこをうまく誘導してあげる術は、対象が発達障害児になっても、本質が変わるわけではありません。それぞれの障害に特性があるので、ある程度の知識は必要ですが、現場ではそのレッテルにとらわれすぎずに、一人一人と一対一で対峙することが大切です。

目標を達成して喜んでいる様子

これまでの運営にあたり、一番苦労されたことは何でしょうか。

水泳という競技自体が命にかかわるリスクも高いので、安全面への配慮には、常に気を使っています。特に発達障害児は、健常児と比べて一つのことに集中してしまう傾向が強いので、服を着たままプールに突っ込んでしまったり、全速力でプールサイドを走り回ったりします。何をするときも、うまくブレーキがかけられないのです。そのあたりは、指導者が注意して見てあげなければなりません。
あとは、指導者が不足しているという問題があります。発達障害児への指導経験が少ない場合、子供たちに対して「何でできないんだろう」と思ってしまったり、障害という言葉に囚われて素直に接することができなかったりして、自身の心身が疲弊してしまう先生もいます。当社では坂本奈穂先生が中心となり指導者育成も行なっているのですが、価値観や捉え方を変えてもらうことは意外に難しいです。また採用段階で、発達障害児に水泳を指導した経験がある、発達障害児に水泳を指導したいという方はほとんどいません。指導者不足は全国的な問題でもあるので、私たちが情報発信することで少しでも水泳指導者が障害児に意識を向けてくれたらと願っています。

子供だけではなく、親御さんも一緒に水泳教室に参加されていると伺いました。親子でスポーツをすることのメリットや、発達障害児クラスで得られた成果などはありましたか。

発達障害児をもつ親御さんからは、今までなかなか水泳を習える場所がなかったので、場があるだけでありがたいと言っていただいています。やはり、発達障害に理解あるスタッフがいて、安心して水泳を習える環境ははまだ少ないようです。実際、昨年度は遠方から片道1時間半かけて来る方もいましたし、今年度は山梨県から来られている方もいます。今後は、社会貢献活動に意欲のある企業と共創して、このような場を日本全国に増やしていきたいと考えています。
親子で一緒にスポーツをすることのメリットは、共通言語が増えることです。家族内での話題が増え、家庭内が明るくなります。また、子供が習っているスポーツを自分もやってみることで、子供に「何でこれができないの」と言いがちだったのが、やってみたら意外と難しいことに気づき、子供に共感しながら向き合えるようになったりもします。
子供が泳いでいるのを見ていたら、自分もやりたくなったと申し込んでくる親御さんもいらっしゃいます。非日常的な体験になり、脳と体にとって良いリフレッシュになるようです。

水に浮く練習の様子

子供にも大人にも、各世代に向けて水泳の魅力を発信されていると思いますが、今後の展望や新たな展開などは検討されていますか。

発達障害児の水泳の場がないことに関しては、放課後等デイサービスという仕組みを使えば解決できるだろうと考えています。放課後等デイサービスとは、いわゆる障害児用の学童と思ってもらえれば分かりやすいでしょう。自治体や国が費用の大部分を負担してくれるので、持続可能な取組になります。現状では、スポーツが学べる放課後デイサービスは少ないので、弊社としては水泳を学べるプログラムをつくっていければと計画しています。
また、現在はコロナの影響でできていませんが、大阪YMCAと取り組んでいるのがAQUA WATCH ASIA プロジェクトという、溺れて亡くなる子供の数を減らそうという取組です。カンボジアでは、毎日6人の子供が川で溺れて亡くなっています。泳ぐことや川の危険性に対する知識がないことが原因なので、そこを啓発する活動や、国内で寄付活動を行なっています。
その他には、動画と連動させて自分の泳力が分析できるアプリの制作や、親が自分の子供に水泳を教えられるよう、指導カリキュラムと指導方法をまとめた動画視聴サービスも開発したいです。またISL(インターナショナルスイミングリーグ)という競泳の国際プロリーグのチームもつくりたいと思っています。
やりたい事があふれていていますが、プロジェクトを進めていく中で関係してくれた方の人生が豊かになるよう、サービスを使ってくれた方の人生が明るくなるよう、一つ一つ丁寧に向きあって世に送り出したいと考えています。

#親子系というハッシュタグで発信させていただこうと思いますが、親子でスポーツを楽しもうという方に一言お願いします。

子供が子供でいる時間は、長いようにみえて本当にあっという間です。私にも子供がいるので、家事に育児に仕事に日々大変だというのは身に染みて理解できます。でも、水泳や自転車など、子供と一緒に取り組めるのは、人生で今この瞬間しかありません。
私は、子供の頃に親と一緒によくスキーやシュノーケリングに行ったのですが、そういった思い出は大人になった今も鮮明に覚えています。後々振り返っても自分の核に影響する貴重な体験だったなと感じています。
子供が成長するにつれ、一緒にスポーツができる機会、一緒に過ごせる時間はどんどん減っていきます。子供をもつ皆さんには、そのことをあらためて考えてほしいと思います。

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