どのような経緯で、スポーツに関わるサービスを運営するように至ったのでしょうか。
私自身がもともとテニスをしており、コートの予約が大変だなという消費者目線をもっていました。一方で、南海電鉄の社員でもあるのですが、業務でIT系の新興ベンチャー企業と接触する中で、今後の経済を豊かにできるのはITテクノロジーであると強く感じ、システム系のグループ会社に出向。そこで、私のITの知見と趣味のテニスとがかけ合わさり、テニスコートの予約システムが社内の新規事業として始まったのです。
テニスコートの予約に関しては、いまでも電話が主流で、オンライン予約でも、各施設のウェブサイトにアクセスして会員になる必要があります。
予約に手間と時間的コストがかかることで、本当にやりたい人しか熱心にアクションを起こしません。ちょっとやってみようかな、という程度の人は、予約の段階でつまずいてしまいます。そういう人のスポーツ機会の芽を摘んでしまうのは、もったいないことです。そこで、テニスをしたい人、今後定期的にテニスをするようになるポテンシャルのある人へのアプローチとして、そこに取り組もうと考えました。
いままで、ひとつの施設に電話して空いていなかったら、その施設の空き日にずらしていた人が、ほかの施設で空きがあるとわかればそちらに行くことができるので、ユーザーのスポーツ頻度を下げずに、意欲をアクションにつなげられているといえます。こうして、市場を活性化することで、スポーツの発展にも寄与しているのかなと思います。
スポーツ業界に対するお考えや、御社の理念を教えてください。
スポーツ業界は、ビジネスの面では磨き甲斐があります。逆に言えば、ITリテラシーがまだ高くないともいえます。ユーザーに、ITを使ってスポーツを便利に、そして身近にしてもらう努力をしつつ、事業者側のITリテラシーを高めることも必要です。意識改革を含め、地道な作業になりますが、直接対面で会いに行って、お話をするようにしています。
また、小規模の法人や個人で経営しているテニス施設は、ここ数十年で半減しています。その要因として、ITやマーケティングの知識がなく、閉鎖的な運営になってしまっていることが可能性として挙げられます。そういった施設のITリテラシーを高めることで、国内のスポーツ環境の基盤となる施設を守ることにつなげられたらいいなと思っています。
この事業を通して、人のつながりを作ることが一番の目的です。弊社のポリシーは、「テニスを通じて人生を豊かにするサードプレイスを作ること」。これまでいろんな出会いがあるなかで、今後の人生を共有して生きていきたいと思える友達は、私の場合はテニスで出会った友達ばかりだったのです。そこで、テニスが人をつなげる力の大きさを感じました。かけがえのない家族と、生活の基盤となる会社も大切ですが、テニス友達というサードプレイスが、人生の豊かさをくれる位置づけだったので、それが日本中の人にあったらいいな、という思いでこの事業に取り組んでいます。
今回のキーワード「#ジモト系」にちなんで、地元に対してどのような働きかけをしていらっしゃいますか。
「このエリアで練習会をします」という声がけをしたり、地域密着のサークルを立ち上げたりすることで、プレイヤー同士のマッチングをしております。すると、育児がひと段落したからテニスを再開したいという人などを含め、24歳から61歳まで幅広い人が集まるサークルができて、知らぬ間に一緒に大会に出ていた、なんていうことが起き始めているのです。
昔は、コミュニティというと、町内会など、半強制的に所属させられるものが主でしたが、いまは自由に選択できるコミュニティが増えています。ただ、本当に自由なだけだと、クレームやトラブルが起きやすいのですが、マネジメントできる人を一人置くだけで、秩序が生まれ、自由だけれど居心地の良い会ができるということもわかってきました。
スポーツ事業に携わることで、スポーツそのものの活性化だけではなく、地元が豊かになることが素敵だなと思っています。今後は、各事業者ができることとできないことをかけ合わせて、助け合いながら取り組んでいけたらと思います。
最後に、今後の展望についてお聞かせください。
現状のサービスは、場所と人とのマッチングですが、今後はマッチングの掛け算を増やしていきたいと考えています。一つは、人と人とのマッチング。コートさえ押さえれば誘う人はいるという人が多いのですが、子育てからの復帰組などは、誘う友達がそもそもいないことがあります。
もうひとつは、人と街とのマッチングです。私は鉄道会社社員なので、地元を活性化させるようなまちづくりをしたいという想いがあります。テニスコートは郊外にあることが多いのですが、街から見ると、遠いエリアから人が来てくれて、街の魅力発見や活性化につながる可能性を秘めているのが、テニスコートなのです。 例えば、地方自治体とコラボして、テニスの大会パンフレットに街の魅力を載せるなど、テニスを街の魅力発信にもつなげるようなことから、掛け算を増やしていきたいなと考えています。