どっちを選ぶ? ランニングシューズとウォーキングシューズとの違い
意外と知られていないことなのですが、歩くためのシューズはクッションが良すぎてもいけません。これは歩行時の衝撃は体重の1.2~1.5倍程度で、ランニングシューズのように、着地時に体重の3倍以上の衝撃がかかり、それを吸収するためのソールを装備したシューズを履くと、着地時の衝撃だけでなく、着用者の脚力も吸収してしまって、効率的に路面に力を伝達できないからです。そのために、ただ歩くだけの場合は、ランニングシューズよりも歩くためにクッション性が調整されているウォーキングシューズのほうが、マッチしていることが多いのです。
では、すべての人にとってウォーキング専用シューズがいいのかというと、そうではありません。それは踵や膝、腰といった関節部分などに痛みを抱えている場合は、クッション性が必要最小限のウォーキングシューズでは、歩行中に痛みが発生して、歩くことが辛くなってしまうことがあります。そんなときには、今回紹介するアディダス ウルトラブーストのようなクッション性の優れたスポーツシューズをセレクトするのも選択肢として正解です。
希望小売価格 22,000円(税別)
このランニングシューズは、2013年にアディダスがドイツの著名な化学品メーカーBASF社と共同で開発したクッショニング素材であるブーストフォームを用いており、このマテリアルは従来スポーツシューズに広く使用されていたEVA(エチレンビニールアセテート)よりも衝撃吸収性、反発性、耐久性に優れていて、その比類なきクッション性で数多くのアスリートを魅了し、サポートしてきました。
シューズのクッション性の良し悪しを決定付けるミッドソールには、衝撃吸収性、反発性、耐久性を高次元で追求したブーストフォームを使用しています。
そしてウルトラブーストは2015年に発表された、このブーストフォームをミッドソールというアウトソール(地面と接する底)とアッパー(足を包む部分)の中間にある衝撃吸収性に不可欠な部分に100%使用することで、これまでのブーストフォーム採用シューズ以上の衝撃吸収性と反発性を確保したランニングシューズなのです。
アッパーには伸縮性に優れ、シューズと足の一体感を提供するプライムニットを使用。
このシューズを履くと、ただ立っている状態で素材が変形していることが感じられ、そのクッション性の高さを推測することができます。そして実際に歩き始めると、このブーストフォームは着地時の衝撃吸収性に優れているだけでなく、自然と足が前に出るような反発性の高さも有していることを体感することができます。
また、このウルトラブーストが一般的なシューズと比較して優れているのは、アッパー部分にプライムニットと呼ばれる伸縮性の高い素材を使用することにより、あらゆる形状の足型にも対応し、包み込むようにピッタリとフィットしてくれる点。そのために長時間着用していても快適な履き心地をキープしてくれるのです。
またアウトソールには自動車用タイヤで有名なコンチネンタル社のラバー素材を使用することで、アスファルトやコンクリートといった舗装路で抜群のグリップ性を発揮し、一歩一歩を確実に刻み、この素材は耐摩耗性にも優れているので、ソールの減りが遅く、これまでのスポーツシューズよりも長く付き合うことができるでしょう。
このウルトラブーストはカラーやデザインetc. 様々なバリエーションが展開されていて、一番安いモデルでも2万2000円(税別)とかなり高い価格設定になっています。一般的なランニングシューズなら2足くらい買えますね。しかしながら、一度履いて、このシューズの機能性の高さや快適性を体感したら、決して高いとは思わないでしょう。このシューズなら外出が億劫になっていたお父さんも「散歩でもしてみるか!?」と、急に行動的になるかもしれませんね。
南井正弘 フリーライター、ランナーズパルス編集長
1966年愛知県西尾市生まれ。スポーツシューズブランドのプロダクト担当として10年勤務後ライターに転身。『フイナム」『Number Do」『モノマガジン』『日経トレンディネット』『SHOES MASTER』を始めとした雑誌やウェブ媒体においてスポーツシューズ、スポーツアパレル、ドレスシューズに関する記事を中心に執筆している。主な著書に『スニーカースタイル』『NIKE AIR BOOK』などがある。「楽しく走る!」をモットーに、ほぼ毎日走るファンランナー。ベストタイムはフルマラソンが3時間56分09秒、ハーフマラソンが1時間38分55秒。