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ヴィレッジヴァンガード下北沢店が選ぶ『“ぼっち歩き”でも寂しくない10曲』
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- 音楽
“街の音”を聞きながら歩くのも楽しいけれど、“お気に入りの音楽”を相棒に歩きたいという方も少なくないですよね。お気に入りの音楽を聴いていると、「いつの間にか長い距離を歩いていた!」ということもあるのでは?
この連載は、音楽やカルチャーに詳しい専門家にテーマを投げかけ、テーマに沿った“お気に入り曲”を紹介してもらいます。専門家が選ぶ意外な曲に、ハッとすることも多そう。いつもの音楽に専門家の“お気に入り”を加えて、今日はいつもより少し長い距離を歩いてみませんか。きっと違う景色が見えるはず。
第一回目の今回は、人肌恋しくなる寒い時期に聴きたい曲として、『ぼっち歩きでも寂しくない10曲』をヴィレッジヴァンガード 下北沢店次長・長谷川朗さんに選曲していただきました。
1)和田アキ子『さあ冒険だ』1995年・WEA Japan
作詞:森高千里 with S.Itoi 作曲:カールスモーキー石井 編曲:米米CLUB
「フジテレビ系列の子ども向け番組『ひらけ!ポンキッキ』で流れていた曲です。実は、1990年代のポンキッキで流れていた曲は名曲揃いなんです。THE ALFEEやチェッカーズもポンキッキで使われていました。当時の番組担当者の選曲眼がとても良かったのだと思います。
この『さあ冒険だ』は、歌詞が散歩や歩くことに合っていると思って選びました。一人で散歩していても、自分の気持ち次第で歩くことが楽しく、一歩一歩が冒険しているように感じられる曲だと思います。
作詞が森高千里さん、編曲が米米クラブというのも豪華ですね」
2)★大江千里『夏の決心』1994年・EPICソニー
作詞・作曲:大江千里
「これも『ポンキッキーズ』で流れていた曲です。とてもポップなメロディーで、僕が小学生の頃から聴きはじめて今でも聴いているという影響力の強い曲です。
大江千里さんはすごいメロディーメーカーで、ポップで耳に残る曲をつくります。この『夏の決心』は、“夏休みは、やりたいことがありすぎて短すぎる!”という歌詞なのですが、メロディーと歌詞があいまって、歩いているときの気分を盛り上げてくれる曲です」
3)★映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー2』サントラElectric Light Orchestra『Mr.blue sky』
(Electric Light Orchestraのスタジオ・アルバム『アウト・オブ・ザ・ブルー』(1977年)に収録)
「『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー2』は、僕の生涯ベストに入るくらい好きな映画です。笑って泣ける映画の最高峰だと思います。
この映画の面白いところは、映画のストーリーと曲をリンクさせているところです。オープニングで、Electric Light Orchestraが歌う『Mr.blue sky』がかかるのですが、陽気なテンションのメロディーに対して、歌詞は後半に行くにつれて寂しい感情が吐露される内容に変わります。映画の主人公の一人を表現している内容なので、まずは映画を見た後に『Mr.blue sky』を聴きながら歩いてほしいです。“自分は一人じゃない。今は一人でも、仲間たちがいるんだ”ということを思い出させてくれる一曲です」
4)★坂本慎太郎『あなたもロボットになれる』2014年・zeroonerecords
作詞・作曲:坂本慎太郎
「バンド『ゆらゆら帝国』のボーカルとギターをやっていた坂本さんの曲です。坂本さんは詩が面白くて、この曲は、“眉間にチップを埋めるだけでみんなロボットになれる。実は魚屋も弁護士もロボットだ”という内容です。これを聴きながら“あの人もロボットかもしれない”という視点で街を歩くとすごく面白い! 一人歩きがちっとも寂しくなくなる、まさに『ぼっち歩きでも寂しくない』曲です」
5)★空気公団『レモンを買おう』2010年
作詞・作曲:山崎ゆかり
「僕が、一人で散歩をするときの音楽で浮かぶミュージシャンが空気公団です。空気公団はメロディーのテンションがゆったりしていて、歩いて聴くのに向いているミュージシャンだと思います。
“早朝に二人で近くの町までレモンを買いに行こう”という歌詞で、その内容通り、ゆっくりと散歩をしたくなる曲です」
6)★ホフディラン『恋はいつも幻のように』1997年
作詞・作曲:小宮山雄飛
「ホフディランも、散歩というキーワードで思いつくミュージシャンのひとりです。二人とも声がのんびりしていて、メロディーも穏やかなので、曲を聴いていると心が落ち着いてきます。『恋はいつも幻のように』は恋愛要素の強い歌詞ですが、彼女を思って一人で夜道を歩く、という意味にもとれる内容で、『ぼっち歩き』にも合うと思い選曲しました」
7)シュガー・ベイブ(1973〜1976年活動)『DOWN TOWN』
作詞:伊藤銀次 作曲:山下達郎
「ウキウキなノリのメロディーが楽しい曲で、歩き出したくなるような雰囲気があります。僕は日曜日にゆっくり朝をすごして、昼から“さあ出かけよう”というテンションの時に聴いています。
シュガー・ベイブは1970年代に活躍したバンドで、山下達郎がボーカル、プロデュースが大瀧詠一という豪華なメンバーで、日本のシティポップの元祖だと思います」
8)★2001年アメリカ映画『ゴーストワールド』サントラ『Jaan Pehechaan Ho(Mohammed Rafi)』
「コミックが原作のアメリカ映画の冒頭で流れる曲です。主人公の女の子がこの曲を聴きながら、猛烈に踊るシーンがあるのですが、その踊り方を思い出してテンションが上がる曲です。
映画は、不器用だけれど自分の考えを貫く女の子の話で、僕は大学生の頃にこの映画を観てとても共感しました。友だちがいなくて寂しく『ぼっち歩き』をしているのではなく、自分の意思を持って一人で歩いているんだ、という気持ちにさせてくれる曲です」
9)サニーデイサービス『スロウライダー』1999年
作詞・作曲:曽我部恵一
「下北沢と縁の深いサニーデイサービスの曲です。
僕は『ぼっち歩き』が寂しいか寂しくないかというのは、その時の気の持ちようだと思ったんです。寂しいと思うと気持ちが沈むけれど、自分の思考を、寂しいという場所から違うところに置き換えられると寂しくなくなる。この曲は、電車に乗ってカップルで海を目指すという歌詞なのですが、一人で歩いていても、この歌詞のように海まで旅行している気持ちに置き換えられたら、歩くことが楽しくなりませんか?」
10)高田渡『自転車に乗って』1971年・キングレコード
作詞・作曲:高田渡
「ふらっとそこまで歩く、というシチュエーションで聴きたくなる曲です。“自転車のベルを鳴らして隣町へ行く”という歌詞なのですが、陽気な雰囲気のあるメロディーで、歩きながら聴くのにぴったり。僕はこの曲が持っている明るさが好きで、僕のお葬式で流してほしいと言っています(笑)。
1971年に発表された曲ですが、その後いろんなミュージシャンがカバーしています。オリジナル曲を作った高田渡さんは1970〜1980年代に活躍したフォークミュージシャンですが、後世のミュージシャンに影響を与えている一人だと思います」