未就学児を対象としたラグビー体験プログラム「うんどうの達人」について、プログラム制作の経緯を教えてください。
弊社では、これまでスポーツをテーマにした事業を扱うこと自体がありませんでした。しかし、知り合いを通じてラグビー協会の方をご紹介いただいたことや、その後に開催されたラグビーワールドカップ2015イングランド大会で、日本が南アフリカに勝利し、国内のラグビー機運が高まったこと、私個人がスポーツ関係の仕事をしてみたいという思いを抱いていたことなどが重なり、スポーツ普及の為に何かできないか考え始めました。
そこで、2019年に日本でワールドカップが開催されることをきっかけに、一般の人々にももっとラグビーを知ってもらおうと、日本ラグビー協会と一緒に何かできることを模索するようになりました。その中で、弊社の柱である「教育」にスポーツをかけ合わせてみたら良いのではないかと思ったのです。弊社は、教材などの出版物を制作しているだけでなく、保育園も運営しています。その知見や経験を生かし、幼稚園や保育園でも実施できるような、ボールを使った運動遊びプログラムを開発し、ラグビーの普及活動をしようということになりました。こうして制作したのが未就学児を対象にしたラグビーボールを使ったラグビー体験プログラム「うんどうの達人」です。
まず、ラグビーをより身近に感じてもらうために、あの独特な形のラグビーボールにたくさん触れて遊んでもらうプログラムを考えて、展開してきましたが、今回コロナのこともきっかけにさらに日本ラグビー協会主催で公式マスコット「レンジー」を使って家庭版運動あそび動画もYoutubeで作成しました。「うんどうの達人」プログラムをレンジ―が実践している楽しい動画ですので、是非ご覧ください。
ワールドカップが契機とおっしゃっていましたが、数あるスポーツのなかでラグビーに着目されたのはなぜですか。また、未就学児を対象としたのには何か理由があるのでしょうか。
日本ラグビー協会の、「ラグビーはメジャースポーツではないので、普及活動に力を入れたい」という思いに共感したからです。また、協会の活動として、小学生以上を対象としたものはすでにありましたが、未就学児への活動はあまりしてないとのことでした。
小学生になると何の競技をするかだけではなく、そもそも、やるかやらないかを含め、自分が選んで決めます。少子化が叫ばれる昨今ですが、子供の人口減少以上にスポーツ人口が減っている現状があります。現代にはeスポーツもありますが、やはりリアルなスポーツ人口も伸ばしたい。そこで、意思が確立する前の未就学児に向けたプログラムを作って、触れてもらうことで、身をもって体を動かすことは楽しいことだと知って欲しいと思ったのです。
ラグビーの普及に関しては、19年ワールドカップの前に競技を知ってもらうことが重要だと考えていたので、18年の段階から「うんどうの達人」を、弊社が経営する横浜市内の園で導入してもらいました。ワールドカップの決勝が横浜国際総合競技場だったので、いい機会でもありました。
「うんどうの達人」とは、具体的にどのような活動を行うのでしょうか。
「鬼ごっこ」や「だるまさんがころんだ」といった誰もが知っている遊びを通して、トライやパスといったラグビーの動きを味わってもらい、楽しみながらラグビーボールに触れてもらう体験プログラムです。体力向上も目指していくものでありながら、専門のコーチが園や家庭に出向かなくても、園の先生や親御さんでもできるので、気軽に導入していただけます。
例えば、ラグビーボールを使った「だるまさんがころんだ」は、ラグビーボールを持って通常の「だるまさんがころんだ」を行い、最後に、鬼のいる線までたどり着いたら、「トライ!」と言います。このように、ラグビーそのものではなく、普段の遊びにラグビーの要素を絡めた、10個のプログラムを作りました。いろいろな遊びを通して、ラグビーを楽しんでもらおうという内容です。
実はこのプログラムは、一般社団法人鬼ごっこ協会の人が持っているメソッドを活用したものです。もとは普段の遊びなので、ほかの競技にも応用ができるのが魅力であるといえます。また、専門のコーチや協会の方が出向く必要もないので、簡単に横展開ができることもメリットです。
子供たちが楽しそうに遊んでくれたことはもちろん、親御さんの反応が嬉しかったですね。実は昔ラグビーをやっていて、子供にも教えたいという方や、ラグビーのコーチをやっている親御さんから話を聞かれたり、ある日公園でこのプログラムをやっていたら、近隣の園の方に声をかけていただいたりと、注目されています。
現在の課題というと、やはりコロナです。いまは保育園内で活動していますが、コロナの到来で、リアルに何かをしてもらうのが難しい状況になってしまいました。そこで、先ほどもお伝えしましたが、集団ではなく、各家庭でもできるような動画を使って本プログラムを発信していこうと、日本ラグビー協会の主催でYouTube動画も作りました。良いきっかけではありましたが、やはりみんなで集まって一緒にやってもらいたいので、コロナの収束を祈るばかりです。
御社の運営施設やメソッドを活用し、一般社団法人F・マリノススポーツクラブ(以下、「マリノス」という。)と共同して実施されている取組があるとお聞きしましたが、具体的にどのような取組を実施されていますか。
弊社が横浜市内で運営している8園で、年中さんと年長さんに向けたサッカー教室を開催しています。こちらも、子供たちが楽しそうにしてくれているのと、普段と違うことができるので、先生も喜んでくれています。マリノスも、ホームタウンでの地域貢献の一環として未就学児に向けてサッカーの楽しさを体験してもらう機会の提供は有難いと仰ってくれています。他にも、同じくホームタウン内で弊社が運営している文化施設内でマリノスのコーチによる保護者向けの食育講座の開催など、マリノスの持つサッカー以外のノウハウにも目を向けています。逆に、マリノスとしてもサッカーだけではない総合的なスポーツクラブを目指して、サッカースクールに通っている生徒向けに、弊社の教育サービスの提供なども検討していただいています。
御社のメソッドを活用し、今後新たな展開は検討していますか。
マリノスのサッカー教室では、たとえば親子や3世代で参加できるようなものや土日にいくつかの園が集まって一緒に行うといったことも、検討できればと思っております。これは、「うんどうの達人」といったプログラムも含めてですが。地域住民に園庭を開放している園もあるので、そこでサッカー体験プログラムを提供するのもいいかもしれません。せっかく「場」はあるので、みんなが喜ぶ形でうまく活用していきたいです。
では最後に、「#親子系」というキーワードで、一言メッセージをお願いします。
親子でキャッチボールをしたり、ボールを蹴ったりすることで、小さい頃から運動に親しんでもらうことは子供が心身ともに健やかに成長するためにも重要です。スポーツを通して、さらに良好な親子関係を築いたり、多くの方に体を動かすことの楽しさを知ってほしいなと思います。私にも子供が3人いて、全員スポーツをしていますが、スポーツによって時間を共有できるのがいいところです。まして未就学児は、いろんなことに興味をもち、何事も純粋に楽しんでくれる時期なので、その時間を大事にしてほしいと思います。