ターゲットはスポーツに馴染みがない人
吉本興業が持つ「エンターテインメント力」(お笑い要素)と、株式会社ティップネスの「気軽に誰もが実施できるスポーツメソッド」を組み合わせて、「エンタメ・お笑い要素を取り入れた新しいフィットネス」を目指す今回の取組。参画の意図について両社の担当者は次の様に語ります。
吉本興業 マネジメント本部 スポーツ事業部 佐伯幸一さん
「弊社のスポーツ部門では、アスリートが50名程在籍しています。今まではアスリートの、マネジメントを中心に行なってきましたが、ここ数年、お笑い芸人とアスリートを掛け合わせた、吉本らしさを売りに、参加者が楽しめるスポーツイベント作りを強化しています。今回の取組では、ティップネスさんの運動メソッドと、我々が抱える芸人を掛け合わせて、新しいコンテンツを生み出しました。我々がターゲットとするのは、スポーツに馴染みの無い方々。お笑い芸人が関わることで、運動とは疎遠となっている方々の参加意欲の向上を目指し、スポーツを始めるきっかけになるのではないかと考えました」
株式会社ティップネス 健康ソリューション事業部 奥田雄司課長
「5,6年前ぐらいから従業員の健康増進・管理を重視する健康経営を重視する企業様が増えており、私共のミッションである運動機会の提供と健康知識の向上に関するサービスはお役に立てると思い、吉本興業さんとの協業に至りました。
主に法人会員様に『スマイルフィットネス』の企画をお話させて頂き、反応のあった企業様に対してリアルとオンライン(生配信)の2通りで継続的に実施し、参加者アンケートを分析することで、スポーツ実施のきっかけや継続にどのように寄与するかを検証することになりました。
参加者は非常に幅広い層を想定しており、特に運動習慣の無い方には興味を持って参加してもらうことがまず大きな一歩となります。その時にお笑い芸人さんがいることは大きな刺激になると感じました。コロナ禍でテレワークによる体重増加や肩こり腰痛などの体調不良を起こす人も増えており、参加してその場ですぐに価値を感じてもらえるようなプログラムを組みました」
ネタとトークで会場を盛り上げる
スマイルフィットネスは吉本興業所属のお笑い芸人とティップネス所属のインストラクターが、昼休みなどの時間を使って、企業で働く従業員の皆さんとフィットネスをおこなう取組です。今回は、お笑い芸人とインストラクターが実際に企業に訪問する「リアルイベント」と、リモートでおこなう「オンライン(生配信)イベント」の2通りで実施します。
このスマイルフィットネスのリアルイベントに参加しているのが健康管理クラウド事業や健診ソリューション事業を行うウェルネス・コミュニケーションズ株式会社(東京都港区)。最終回となる第5回目は、お笑い芸人・ジョイマンの高木晋哉さんと池谷和志さん、そしてティップネスインストラクターの千秋先生が参加して行われました。
昼休みのオフィスに「こんにちはー!」と元気よく登場したのはジョイマンのお二人。直前まで仕事モードだった参加者の緊張をほぐすように、持ちネタと絶妙なトークでオフィスの空気を和らげます。
空気が温まったところで今度はティップネスインストラクターの千秋先生がマイクを握ります。レッスン冒頭は一定の動作を通して各自の体の状態をチェック。スタジオレッスンで豊富な経験を持つだけに丁寧に分かりやすく指示を出してくれます。
プログラムは短時間でも本格的
メニューはオフィスワーカー特有の眼精疲労や肩こりなどの不定愁訴(しゅうそ)に特化したもの。運動器具も必要なく、オフィスや自宅のわずかなスペースでも簡単に実施が可能です。それでも千秋先生が「ヨガの要素を取り入れて、インナーマッスルもかなり使うので、心身のバランスが求められます」と語るように、シンプルに見えて本格的。ジョイマンの2人も参加して、「これはキツイ!」と悪戦苦闘しながらも、「先生!この動きはどこに効果があるんでしょう?」と質問を忘れません。芸人が参加者に代わり、インストラクターと会話のキャッチボールを行うのも本プログラムの特徴の1つと言えます。
レッスンは約40分という時間でしたが、終わる頃には多くの参加者が額に薄っすらと汗をかき、レッスン前と同じ関節の動きをチェックして、その可動域の変化に驚く人が続出。「血行が良くなって体がポカポカする」「肩が軽くなった」という反応がありました。
共にレッスンに参加したジョイマンの二人も「参加者の方も汗をかくにつれて、表情が良くなっていくのが分かりました。僕のネタの切れも上がりました!」(高木さん)、「普段使っていない筋肉がこんなにあるとは。皆で一緒に楽しく運動できるので、チームワークも高まると思います」(池谷さん)と笑顔でした。
運動習慣の喚起に
2か月間、全5回にわたり、リアルとオンラインで実施された「スマイルフィットネス」。今回は検証を目的とした試験的な開催でしたが、参加した企業担当者もその効果を好意的に受け止めています。
ウェルネス・コミュニケーションズ株式会社IT企画部 情報システムチーム 井上剛志さん
「各レッスンのアンケート結果から『以前よりも体を動かすことが好きになった』という前向きな声が過半数以上ありました。また『芸人さんがやっているのを見て、楽しそうだったので自分も参加してみた』という声もあり、運動習慣の喚起につながっていると感じました。今回の試みは大成功だと言えます」
ウェルネス・コミュニケーションズ株式会社 ヘルスケアクラウド推進部 平山麻衣子さん
「初めての取組でしたが、プログラム実施日以外の休み時間に自主的に習った動きをしている光景も見られ、運動に関心を持つ社員が増えたと感じます。お笑い芸人さんと一緒に運動するという今までにない切り口は関心を集め、モチベーション維持にも大きく寄与していると思うので、今後も継続して採用を検討していきたいと思います」
楽しくなければ続かない
「お笑い」と「スポーツ」という一見、かけ離れた要素を組み合わせることで、予想以上の相乗効果を生み出した「スマイルフィットネス」。吉本興業の佐伯さんも今後のさらなる展開に期待をしています。
「今回の検証を終えて、笑いはスポーツにプラスに働くと実感しました。持ちネタやトークを通じて楽しい雰囲気を作り出すことは勿論ですが、例えば運動が苦手なお子さんがいたときに、同じく運動が得意でない芸人が笑いを交えながら一生懸命な姿を見せる事で、お子さんの心のバリアを取り除くことができる。それに親御さんも一緒に楽しんでもらうことで、家族皆さんで参加することができる。芸人の空気を読む洞察力や機転、サービス精神はそういう所に生きると思います。
結局、どんなことでも楽しくなければ続かない。イベントに参加して楽しかったという思い出を作ってもらうことが大切だと思います。ティップネスさんとのこの試みは非常に良いパッケージと捉えており、今後はオンラインのメリット・デメリットも分析しながら、継続開催につなげていければと考えております」